コラム:森林療法のエビデンス①

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会員の皆様へ季刊でお届けしております、会報誌「森林療法」2012年3月26日に発行しました20号より、理事の飯田みゆきさんに寄稿いただきましたコラムをお届けいたします。




「フィトンチッドの科学的研究」


飯田みゆき


 2011年秋のヒットドラマ「家政婦のミタ」。ご覧になった方もいらっしゃると思います。主人公の家政婦の「承知しました。」という全受容のセリフが話題となっていましたが、私が印象深かったのは「それは、あなたが決めることです。」という主人公の決めゼリフでした。

 セルフケアは、まさに「私が決めること」の連続です。ですが、もし判断材料があれば、決める時の目安になります。森林セルフケアも「森に行くと体調が良くなる」という経験を自分で感じ取ることが大切なのですが、科学的な知見を判断材料にすることもできます。今号から、今まで得られている科学的研究を論文や図書から抜粋して少しずつ紹介していきたいと思います。

 ところで、皆さんはエビデンスという言葉を聞いたことはあるでしょうか。エビデンス(evidence)とは、医学および保健医療分野では「ある治療法がある病気・怪我・症状に効果があることを示す証拠や検証結果・臨床結果を指す。(wikipediaより)」ことで、科学的根拠という意味を持っています。これから紹介する研究内容はすべての人に当てはまるものではありませんが、森に行って健康になろうとするときのひとつの目安になるかもしれません。

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「フィトンチッドの科学的研究」

1930年ごろ、旧ロシアのB.P.トーキン氏が植物由来の抗菌作用を持つ揮発性(蒸発しやすい性質、香りとして感じられる)物質を発見し、フィトンチッドと名づけました。

ロシア語で「植物」を意味する「フィト」と、「殺す」を意味する「チッド」からなる言葉です。現在は、一般に森林の香り成分を意味する場合が多いようです。森林の香り成分は多種類ありますが、最も多いのがテルペン類と呼ばれる仲間です。中でも、αピネンという成分はほとんどの樹種に含まれ、フィトンチッドの代表として様々な研究に用いられています。【参考資料:「森林の不思議」谷田貝光克(現代書林)、「森と健康」全国林業普及協会編、「フィトンチッド普及セsンターHP」http://www.phyton-cide.org)】


今回はαピネンの研究をふたつ紹介しましょう。森林で香りを感じた時、自分の体にもこんなことが起きているかもしれないと想像して楽しんでみてください。


◆αピネンのヒト生理機能への検討

医学部学生と教員 計12名(年齢20~45歳)に、胸の上に置いたロートからエアーポンプでαピネンを10~20分拡散させ、脳波と心電図に及ぼす影響を検討した。αピネン拡散後数分以内に全員の脳波にα波増強が観察され、心電図では自律神経を副交感神経系の方向にする結果が得られた。この結果は、αピネンがヒトに対して落ち着いた感を抱かせる結果と考えられた。

 (山岡.aromatopia,Autum:16-21,1992)

【補足】α波はリラックス時に多く出現することが知られています。また自律神経では緊張時に交感神経が働き、リラックス時には副交感神経が働くことが知られています。このバランスは心拍数が変化する様子を測定することで検査することができます。


◆αピネンのヒトの疲労への検討

とある会社の新入社員69名(18~20歳、女性)を対象に、光の点滅への反応から疲労度を測定するフリッカーテストを実施。合宿研修中の4泊5日間、寝室にαピネンを入れたアルコールランプを設置し小型のファンで連続的に拡散させた29名は、αピネンを漂わせなかった40名と比較し疲労回復が早く、自覚症状の訴えが少なかった。この結果から、αピネンにより疲労が軽減されたことが示された。

(島上ほか.日本衛生学会雑誌,38(1):184,1983)


【補足】フリッカーテストは、光の点滅速度を上げていった時に連続して見えるようになる速さを測定するもので、疲労や注意力の客観的な測定に用いられます。

このブログ記事について

このページは、事務局が2015年4月10日 16:24に書いたブログ記事です。

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