コラム:森林療法のエビデンス⑤

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会員の皆様へ季刊でお届けしております、会報誌「森林療法」2013年3月に発行しました24号より、理事の飯田みゆきさんに寄稿いただきましたコラムをお届けいたします。


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「味覚刺激に対する科学的検討」

理事 飯田みゆき


今回は五感の最後、味覚刺激が身体に及ぼす影響の研究を紹介します。
森林セルフケア体験会では味覚を使った体験はほとんど行いませんが、「食」を通して森林の味覚は楽しまれています。味覚は心と身体にどのような効果をもたらすのでしょうか。今回は、味覚と自律神経活動についての研究と、「森林医学 朝倉出版2006」からの抜粋を紹介します。


◆味覚・うま味と自律神経活動

 22~32歳の女性に「酸味:クエン酸」「塩味:NaCl」「うま味:グルタミン酸ナトリウム」「甘み:ショ糖」「苦味:キニーネ」の溶液3mlを1分間口に含んだ後吐き出させ、唾液分泌量と心拍のゆらぎを測定した。

すべての刺激により唾液分泌量は増加したが、苦味は他の刺激よりも分泌量増加が有意に弱かった。ポータブル心電計による心拍変動を解析すると、うま味と低濃度の塩味刺激により副交感神経の活動亢進がみられ、苦味と高濃度の塩味刺激により交感神経活動の亢進がみられた。

キニーネは嫌いな味と答えた者がほとんどであり、拒否情動と、塩辛さの不快情動が結果に現れたと考えられる。動物は毒物が呈する味として苦味を本能的に忌避することから、自律神経活動の変化はこの生理的反応を反映した可能性がある。

うま味刺激は唾液分泌効果を介して摂食機能を高めるだけでなく、自律神経の副交感神経を高め、消化機能を高めると同時に情動的にも落ち着いた状態を生じる可能性が示唆された。

(杉本久美子 日本味と匂学会誌Vol.17,No.2:109-115;2010)


【補足】
唾液分泌などの消化管活動は、副交感神経活動時に活発になります。「おいしい」という感覚は、からだ全体をリラックスさせてくれるようですね。
逆に苦味は、交感神経の活動によりシャキッとさせるようです。春先の山菜など、苦味のある食べ物は苦味健胃薬として昔から知られています。
また、自律神経活動として森林セルフケア講座でも紹介している心拍のゆらぎを測定していることも興味深く感じました。


◆スギ樽貯蔵ウイスキーの味覚刺激

スギ樽貯蔵したウイスキーのブレンド(アルコール濃度25%)を作成し、閉眼状態にて通常のスギなしウイスキー、水、25%エタノールとともに順番をランダムにして舌の上に0.1ml置いた。

その結果、スギなし、スギ樽とも主観評価の快適感において差異はなく、多くの被験者は同じウイスキーを舌の上に置かれたと感じていた。しかし生理応答では、スギなしウイスキーで一過性の収縮期血圧の上昇を認め、味覚刺激前の値にもどるのに50秒を要したのに対し、スギ樽ウイスキーでは有意な血圧上昇は認めず20秒で前値に戻った。

脳活動では、スギなしウイスキーは刺激後90秒間つねに活発な活動が継続していたが、スギ樽ウイスキーでは刺激直後に一過性の脳活動が観察されたのみで、その後は有意な活動は観察されなかった。主観的には差異がなかったが、生理的には明らかな違いがあることがわかった。これらはスギ樽由来の抽出物によるものと考えられた。

(森川 岳ほか 日本生理人類学会大会研究発表要旨集,45:76-77 2001)

【補足】
味覚は、味覚受容体に化学物質が結合して検出されます。自覚していなくても、存在する化学物質によって身体は反応するのですね。知らないところで様々な反応をしているカラダって奥が深いです。



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このブログ記事について

このページは、事務局が2015年6月 7日 13:14に書いたブログ記事です。

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