コラム:森林療法のエビデンス④

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会員の皆様へ季刊でお届けしております、会報誌「森林療法」2012年12月に発行しました23号より、理事の飯田みゆきさんに寄稿いただきましたコラムをお届けいたします。

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「触覚刺激に対する科学的検討」

理事 飯田みゆき


前回までに、五感のうちの嗅覚、視覚、聴覚刺激に関する研究を紹介しました。今回は触覚刺激が身体に及ぼす影響の研究を紹介します。

森林セルフケアでは、樹木の幹肌やコケ、キノコなどに触わり感触を楽しんでもらうことがあります。触れることは、「考える」から「感じる」への入り口になるように思っていますが、さて、実際には身体にはどんな変化が起きているのでしょうか。今回紹介する研究は「森林医学 朝倉出版2006」と、「森林浴はなぜ体にいいか 文藝春秋2003」からの抜粋です。


◆接触刺激による主観評価と収縮期血圧への影響の検討

男子大学生13名を対象に、ナラ、冷やしたナラ、ヒノキ、スギ、金属、温めた金属、アクリル、冷やしたアクリル、塗装したナラ材を用いて、触れているものが見えないように手で接触させた。主観評価では木材と温めた金属が「快適」、金属、冷やしたアクリル、冷やしたナラ材は「不快」と評価された。拡張期血圧は金属、アクリル、冷やしたアクリルで有意の上昇を認めたが、温めた金属では上昇が抑制された。木材では接触直後には一過性の血圧の上昇を認めたが、15秒後には接触前の値に戻りその後上昇することはなかった。冷やしたナラ材では、主観評価は不快であると評価されたが拡張期血圧は上昇しないことが確認された。(宮崎良文ほか 日本木材学会大会研究発表要旨集,48:2161998)

【補足】

宮崎先生はこの研究の前に通常温度での木材と金属の接触刺激を研究し、金属接触時には拡張期血圧と瞳孔径が上昇してストレス状態になり、木材接触時には軽微な上昇後にすぐに接触前の値に戻る結果を得ていました。しかし学会で「木材は元々温かく、金属は冷たいので当たり前である」との指摘を受け、温度条件を変化させて上記の研究を行ったそうです。冷やしたナラ材が不快であっても拡張期血圧が上がらなかったことについて宮崎先生は「人の生理機能は先天的に自然対応にできていることを示す傍証の一つである」とコメントされています。


◆接触刺激の脳活動(α波が脳活動時に減衰することを利用して測定)への影響の検討

男子大学生10名を被験者として、閉眼状態で木材、綿、タワシなど15種類を手のひらで30秒間接触し、その後30秒間は指先で材料を撫でる動作を行わせた。単に触れるという受動的な接触の場合、木材は他の材料に比べて脳活動は小さかった。積極的に撫でた場合は、木材の挽材面(ノコギリ面)で特に強い脳活動が観察された。単に触れた場合には人に対する刺激が少なく優しい材料であるが、能動的に撫でた場合には強い脳活動が観察され、面白みのある素材であると感じられていることが示唆された。

 (宮崎良文著『森林浴はなぜ体にいいか』文藝春秋123-124,2003)


「森林浴はなぜ体にいいか」には、この他にも足にフローリングや畳を接触させる研究なども紹介されています。受動的な接触、指で撫でる接触、また素材が何であるか分かっているかどうかによって脳活動は変化するそうです。

森林には「快適でリラックスする」副交感神経を活性化する要素と、「対象に興味をもって体が活動的になる」交感神経を活性化する要素と、両方あるように思います。森であれこれ触っていると、交感神経と副交感神経がしなやかに連動し始めるかもしれません。但しかぶれたり、トゲがある場合があるので、気をつけましょう~。


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このブログ記事について

このページは、事務局が2015年6月10日 13:45に書いたブログ記事です。

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